AI活用 エキスパートシステムとマイシン
人工知能という技術の中で、特定の分野に秀でた人の知識や経験を計算機の仕組みの中に入れ込み、その道の達人のように考え判断を下す仕組み作りが古くから行われてきました。こうした仕組みは、専門家システムと呼ばれ、人の専門家の代わりになること、あるいは専門家の手助けをすることを目指しています。
具体的には、どのように専門家の知恵を計算機に教え込むのでしょうか。それは「もし〜ならば〜」という形の規則をたくさん作り、それらを計算機に覚えさせることで実現します。例えば、医療診断の専門家システムを作る場合、「もし熱があり、咳が出て、喉が痛ければ、風邪の可能性が高い」といった規則を多数用意します。これらの規則は、専門家の経験や知識に基づいて作られます。
そして、実際に診断を行う際には、患者さんの症状を入力します。すると、専門家システムは、入力された症状と、あらかじめ記憶している規則を照らし合わせます。もし入力された症状が、ある規則の「もし〜ならば〜」の「もし」の部分に合致すれば、その規則の「ならば」の部分にある結論を導き出します。例えば、患者さんが熱、咳、喉の痛みを訴えている場合、システムは「風邪の可能性が高い」と診断します。このようにして、専門家システムはまるで専門家のように考え、判断を下すことができるのです。
専門家システムは医療診断だけでなく、お金に関する助言や機械の不具合を見つけるなど、様々な場面で使われています。例えば、金融の専門家システムは、顧客の資産状況や投資目標に基づいて、最適な投資プランを提案することができます。また、工場で使われる機械の故障診断システムは、センサーから得られたデータに基づいて、故障の原因を特定し、修理方法を提案することができます。
専門家システムの研究開発は人工知能研究の黎明期から行われており、現在でも様々なシステムが開発され、実際に活用されています。今後も、様々な分野での応用が期待されています。
