楽しみながら学ぶ!シリアス・ゲームとは?意味・仕組み・活用例を解説

楽しみながら学ぶ!シリアス・ゲームとは?意味・仕組み・活用例を解説

AIの初心者

「シリアス・ゲーム」って、遊びではないゲームのことですか?普通のゲームとの違いを知りたいです。

AI専門家

遊ぶ楽しさを生かしながら、学習や訓練、社会の課題について考えることなどを目的にしたゲームだよ。「シリアス」は、楽しくないという意味ではないんだ。ゲームの中での行動が、どんな学びや成果につながるかを考えて作られているんだね。

AIの初心者

学校の勉強だけでなく、社会の役にも立つんですね。どんな例があるんですか?

AI専門家

例えば、タンパク質の形をパズルのように扱う「Foldit(フォルドイット)」があるよ。参加者が考えた構造の候補が、研究者の検証を通して科学研究に役立つんだ。ほかにも、仕事の判断を練習したり、防災について話し合ったりする使い方があるよ。

シリアス・ゲームとは

シリアス・ゲームは、学習・訓練・健康支援・研究・社会課題への理解など、娯楽以外の目的を中心に据えて設計されたゲームです。シリアスゲームとも表記されます。楽しさや挑戦したくなる仕組みを入り口に、知識を使い、判断を試し、結果から学ぶ機会を作ります。

ゲームを授業や研修に取り入れるときは、「何を楽しめるか」とともに「何を身につけたいか」を考えることが大切です。この記事では、遊びが学びにつながる仕組みから、ゲーミフィケーションとの違い、分野別の活用例、導入時の確認点までを解説します。

活用先は学校に限りません。仕事の訓練、科学研究への参加、地域の課題を考える活動など、ゲームでの体験を現実の目的に結びつける点が共通しています。

ゲームでの体験が教育・訓練・科学研究・社会課題への理解につながる全体像

シリアス・ゲームとは何か

シリアス・ゲームを理解する鍵は、ゲームを作る目的にあります。例えば、限られた予算で街を運営するゲームでも、住民の暮らしや環境への影響を考えるために設計されていれば、シリアス・ゲームとして捉えられます。遊ぶ過程でどのような判断を経験し、その経験を何に役立てるのかが重要です。

「シリアス」という言葉は、ここでは真剣勝負の厳しさや、楽しさがないことを指しません。参加者を引きつける物語、達成感、仲間との協力なども活用できます。対象も子どもだけではなく、新入社員、医療などの専門職、地域住民までさまざまです。目的に応じて、覚える知識、練習する行動、考えてほしい問題が変わります。

形式はテレビゲームやコンピューターゲームに限定されません。カードを使って災害時の対応を話し合うゲームや、資源を配分するボードゲームも、実用的な目的とゲームとしてのルールを備えていれば対象になります。画面の美しさや機材の新しさだけでは、シリアス・ゲームかどうかは決まりません。

また、シリアス・ゲームはAIに固有の用語ではなく、AIの利用も必須ではありません。紙の教材でも実現でき、AIや仮想現実を使う場合もあります。先に学習や活動の目的があり、その目的に合う仕組みや技術を選ぶと考えると、位置づけを理解しやすくなります。

遊びが学びにつながる仕組み

ゲームで体験したことを学びに変えるには、行動と結果のつながりを考えられる設計が必要です。基本になるのは、課題に取り組み、選択・行動し、結果を確かめ、再挑戦したうえで振り返る循環です。正解したかどうかに加え、「なぜそうなったか」「次は何を変えるか」を考える機会が理解を支えます。

  1. 課題をつかむ:達成したい目標と、時間・資源などの条件を確認します。
  2. 選択して行動する:持っている知識を使い、複数の選択肢から方針を決めます。
  3. フィードバックを受ける:得点だけでなく、選択によって状況がどう変わったかを確かめます。
  4. 再挑戦する:前の結果を手がかりに条件や行動を変え、違いを比べます。
  5. 振り返る:判断の理由や結果を言葉にし、教科の内容や実際の仕事との関係を整理します。

課題への行動、結果の確認、再挑戦、振り返りを繰り返して学びを深める流れ

例えば、歴史学習のために、ある時代の町で食料や労働力を配分するゲームを作るとします。これは仕組みを説明するための仮想例です。プレイヤーは、食料を備蓄するか、交易に回すか、農地の整備に人手を使うかを選びます。結果を比較するには、その時代の生産や交通、社会の制度について学んだ知識を使う必要があります。

体験後に「なぜ備蓄を優先したのか」「別の条件なら判断は変わるか」を説明すると、選択と背景知識のつながりが見えてきます。ただし、ゲームの結果は設計された仮定に基づきます。実際に起きた史実と、学ぶために設定した条件や架空の展開を区別して扱うことが欠かせません。

現実では試しにくい失敗を経験し、やり直せることも特徴です。協力型の課題なら、仲間と情報を交換し、意見が分かれた理由を確かめる練習にもなります。一方、一部の人だけが操作や判断を担当すると、ほかの参加者は体験しにくくなります。役割を交代したり、全員に判断理由を尋ねたりする進め方が役立ちます。

楽しさは参加や継続を支えますが、高得点や長いプレイ時間だけでは学習成果を判断できません。操作に慣れただけで得点が上がる場合もあるためです。また、通常の授業にも実験、討論、問題演習などの能動的な学びがあります。ゲームの特徴を生かしながら、説明や対話と組み合わせることが大切です。

ゲーミフィケーションやシミュレーションとの違い

関連する言葉は、何に注目しているかで区別できます。シリアス・ゲームはゲーム全体の目的、ゲーミフィケーションはゲームの要素を取り入れる方法、シミュレーションは状況や仕組みの再現に注目します。互いに重なる場合もあり、必ずどれか一つに分類されるわけではありません。

概念 考え方 例 重なり
シリアス・ゲーム 学習や訓練、研究などの実用的な目的を持つゲーム全体を設計する 資源配分の判断を通して環境問題を考えるゲーム 教育、模擬体験、得点などの要素を組み合わせられる
ゲーミフィケーション ゲーム以外の活動に、得点・バッジ・順位などのゲーム要素を取り入れる 学習アプリの課題提出にポイントや順位表を付ける 同じ要素をシリアス・ゲームにも使えるが、導入先がゲーム全体とは限らない
ゲームを用いた学習 ゲームを学習の手段として利用する 娯楽向けの街づくりゲームを授業で使い、都市の課題を議論する シリアス・ゲームの教育利用に加え、娯楽作品の授業利用も含む
教育ゲーム 知識や技能の習得を目的に作られたゲーム 実験の条件を選びながら科学の原理を学ぶゲーム シリアス・ゲームのうち、教育を目的とする領域と重なる
シミュレーション 現実や仮想の状況・仕組みをモデルとして再現する 条件を変えて交通量や混雑の変化を調べるモデル 実用的な目的のもとでゲームの目標やルールを組み込むと、シリアス・ゲームにもなる

例えば、学習アプリに連続学習のバッジを付けるのはゲーミフィケーションです。それに対して、参加者が役割を持ち、制約の中で判断し、結果を受けて次の手を考える学習用ゲームを作る場合は、ゲーム全体が学習のために設計されています。どちらも意欲を支える方法ですが、バッジを付けただけで学習内容そのものがゲームになるわけではありません。

シリアス・ゲームの全体設計、ゲーミフィケーションの要素導入、シミュレーションの状況再現の違いと重なり

シミュレーションも、再現された環境を観察したり手順を確認したりするだけなら、必ずしもゲームではありません。医療や防災の模擬訓練すべてを、シリアス・ゲームと呼ぶのは適切ではないということです。導入を考えるときは、呼び名だけで判断せず、参加者が何を選び、どのような結果を受け取り、何を学べるのかを確認しましょう。

教育・医療・企業・地域での活用例

シリアス・ゲームの用途は、知識を覚える活動から、判断の練習、他者との対話まで広がります。以下は各分野での使い方を具体化した例であり、特定の製品の実績や効果を示すものではありません。「目指す成果」は、導入後に確かめるべき目標として捉えてください。

分野 体験する課題 目指す成果
学校教育 歴史上の条件を踏まえた意思決定、科学実験の条件選び 知識を使って結果を予測し、判断の根拠を説明する
医療・健康支援 手術手順に沿う課題への挑戦、リハビリの動作と連動したゲーム 手順への理解や、専門家の指導下での練習への参加を支える
企業研修 新人の業務判断、予算や人員を配分する経営体験 業務のつながりや判断基準を理解し、チームで説明・相談する
環境・街づくり エネルギー、予算、土地利用の配分 暮らしと環境など、複数の目標の関係を考える
防災 限られた情報のもとで避難や支援の方針を選ぶ 判断に必要な情報と、自分の知識の不足に気づく
地域・社会課題 住民の立場を分担する話し合い、貧困や差別に関わる条件の疑似体験 立場による選択肢の違いを知り、対話の論点を見つける

教育では、結果を見る前に予想を立てる活動を加えると、学んだ知識を使う機会ができます。科学実験を題材にするなら、一度に一つの条件を変えて結果を比べ、その理由を説明する流れが考えられます。歴史の場合も、出来事の名前を覚えることに加えて、当時の人が置かれた条件を踏まえて選択を考えられます。

企業研修では、自分の担当する仕事がほかの部署や顧客にどう影響するかを体験できます。例えば、納期を優先する判断が品質や費用に及ぼす影響をゲーム内で確認し、終了後に実際の業務ルールと照らし合わせます。新入社員なら相談先や判断の手順、管理職なら複数の目標を調整する考え方など、対象者によって扱う課題を変える必要があります。

医療では、手順の練習やリハビリへの参加を支える用途があります。ただし、ゲーム内で課題を達成できても、治療効果や現場での技能向上が保証されるわけではありません。医療・健康支援への利用では、目的に合う内容を専門家が選び、指導と評価を組み合わせることが前提です。模擬環境で練習できる範囲と、実際の現場で必要な能力を区別して扱います。

環境や街づくりでは、便利さ、費用、環境への負担などを同時に考えられます。地域住民が異なる役割を担えば、自分の立場では見落としていた事情に気づくきっかけにもなります。防災を題材にする場合は、ゲームの正解を覚えて終えるのではなく、地域の条件や実際の防災計画との違いを振り返ることが大切です。

貧困や差別を扱う疑似体験も、他者の選択肢が制約される状況を考える入り口になります。一方、短いゲームで当事者の経験すべてを理解することはできません。設定が単純すぎると、偏った見方を強める可能性もあります。当事者の声や背景となる制度を学ぶ活動と組み合わせ、体験で分かったことと、まだ分からないことを分けて話し合う必要があります。

Folditが示す科学研究への貢献

学習や訓練以外の目的を持つ例として、Foldit(フォルドイット)があります。タンパク質の立体構造を扱うパズル型のゲームで、参加者は画面上の形を操作し、得られた評価を手がかりに構造の候補を改善していきます。タンパク質を構成するアミノ酸の鎖がどのような形をとるかという複雑な問題を、人が試行錯誤できる課題にしています。

参加者は、ある部分の配置を変えたり、別の形を試したりしながら、よりよい評価を得られる候補を探します。空間を捉える発想や、ほかの参加者との協力を研究につなげられる点が特徴です。専門知識を最初から十分に持っていなくても、ゲームの操作や課題への挑戦を通して参加できるようにすることに意味があります。

Folditには、参加者が作った構造の候補がタンパク質の構造解明に貢献した事例があります。ただし、ゲームで高い評価を得たことと、科学的に妥当だと確かめられたことは同じではありません。参加者による候補の探索と、研究者による分析・検証を組み合わせることで、ゲームの成果が研究に役立ちます。

Folditの参加者による操作と協力が構造候補を改善し、研究者の検証を経て科学研究に役立つ関係

これは、市民が研究に参加する「市民科学」の一例です。参加者だけで研究の全工程が完結するという意味ではなく、多くの人の発想を専門的な研究につなぐ仕組みと捉えると理解しやすくなります。シリアス・ゲームの目的が、プレイヤー自身の学習にとどまらず、現実の問題に対する候補や手がかりを集めることにも向けられると分かります。

AI・VR・ARで広がる体験

AIやVR・ARを組み合わせると、学習者への支援や体験の作り方に選択肢が増えます。いずれもシリアス・ゲームの必須条件ではありませんが、実装や利用条件によって、紙や通常の画面では行いにくい体験を支えられます。

AIの用途には、回答や操作の履歴に応じた難易度の調整、ヒントの提示、対話する相手役などがあります。例えば、企業研修で顧客とのやり取りを練習したり、課題に行き詰まったときに段階的な手がかりを出したりする使い方が考えられます。全員に同じ課題を同じ順序で出す方法に、個々の状況に応じた支援を加えられる可能性があります。

ただし、正答率や操作時間から理解度を完全に読み取ることはできません。正解を推測しただけの場合や、操作に不慣れで時間がかかっている場合もあります。また、AIが生成する説明や対話には誤りが含まれる可能性があります。教材として扱う情報の確認や、指導者が内容を見直せる仕組みが必要です。

VR(仮想現実)は、仮想の空間に入り込むような体験を作る技術です。例えば、歴史学習で当時の街並みを再現し、建物や道の配置を手がかりに人々の生活を考える教材が想定できます。医療訓練でも、仮想空間で位置関係や作業の流れを確認する課題を設計できます。ただし、再現された景観や動作が、史実や現場の条件をどの程度反映しているかは別に確かめなければなりません。

AR(拡張現実)は、現実の景色に文字や図などの情報を重ねる技術です。医療訓練の模型に確認箇所を重ねて表示するなど、目の前の対象と説明を結びつける使い方が考えられます。その上で課題や判断、結果を確認するルールを設ければ、シリアス・ゲームの体験に組み込めます。

没入感の高さと、学習成果の大きさは別に考える必要があります。機材費や準備時間、操作の負担、VRによる酔い、利用できる場所なども選定条件です。目的が意見交換ならカード型、繰り返しの練習なら通常の画面でも十分な場合があります。必要な体験を先に決め、その実現に合う技術を選びましょう。

導入前に確認したい効果と注意点

導入の出発点は、遊び終えた人が何をできるようになるかを具体的に決めることです。「防災意識を高める」「仕事を理解する」だけでは、成果を確かめる方法が曖昧になります。「避難判断に必要な情報を挙げられる」「業務上の選択について理由と相談先を説明できる」など、確認できる行動に落とし込むと教材を選びやすくなります。

そのうえで、ゲーム中にその行動を練習できるか、結果を理解する情報が返ってくるか、終了後に振り返る時間を設けられるかを確認します。操作説明に時間を使いすぎて、学ぶための試行錯誤がほとんどできない場合は、難易度や進め方の調整が必要です。

  • 内容と対象者:情報の正確さ、対象年齢、前提知識、課題の難易度が参加者に合っているかを確認します。
  • 時間と費用:プレイ時間に加え、機材や教材の費用、準備、操作説明、振り返り、運営する人の負担まで見積もります。
  • 参加のしやすさ:ゲーム経験や操作速度の差、視覚・聴覚・身体の特性に応じた調整、別の参加方法を用意できるかを確かめます。
  • 成果の確認:事前と事後の課題、判断理由の説明、実際の場面での行動など、目的に合う評価方法を決めます。
  • データの扱い:学習履歴や個人情報として何が保存され、誰が閲覧でき、どの目的で使われるかを確認します。

到達目標、ゲーム体験と振り返り、成果の確認を対応させて導入を判断する観点

効果を確かめるときは、楽しさ・満足度と、知識や技能の定着を分けて評価します。例えば、資源配分の課題で高得点を取れたかに加え、条件を変えた別の課題でも理由を説明できるかを確かめます。少し時間を置いた確認や、授業・仕事での行動の観察を組み合わせると、その場で攻略法を覚えただけか、学んだ内容を使えるようになったかを考えやすくなります。

順位や報酬の設計にも注意が必要です。上位を目指すことが励みになる人もいれば、比較されることや失敗を見られることに不安を感じる人もいます。勝敗だけに意識が向くと、内容を考えるより、点数を稼ぐ行動が優先されかねません。協力型の課題を選ぶ、自分の前回の結果と比べる、失敗した判断も振り返りで扱うなど、目的と参加者に合わせた工夫ができます。

さらに、ゲームは現実の一部を選んで表したものです。何が省略され、どの結果が高く評価されるように作られているかを問い直すことも学びになります。例えば、街づくりゲームが経済的な得点だけで成功を決めるなら、住民の暮らしや公平性をどう扱うべきかを話し合えます。モデルに含まれていない条件を確認せず、ゲーム内の判断をそのまま現実に当てはめないことが大切です。

最初は少人数・短時間で試し、参加者がつまずく操作、判断に迷う場面、振り返りで説明できたことを確かめると、改善点を見つけやすくなります。既存の授業や研修に組み込み、説明、体験、対話、確認の役割を分担させましょう。シリアス・ゲームを選ぶ基準は、楽しめることに加えて、その体験が目的とする学びや行動につながっているかどうかです。

更新履歴

日付 内容
2025年2月1日 初回公開
2026年10月4日 ゲーミフィケーションとの違いを補い、活用例と成果の確かめ方を具体化