計算量を削減する畳み込み処理

計算量を削減する畳み込み処理

AIの初心者

先生、『Depthwise Separable Convolution』ってよくわからないんですけど、普通の畳み込み処理と何が違うんですか?

AI専門家

そうですね。普通の畳み込み処理は、例えば、縦・横・色の情報を一度に全部見て計算するのに対して、『Depthwise Separable Convolution』は、まず色の情報を別々に見て、その後で縦横の情報をまとめて見る、という風に処理を分けて行うんです。

AIの初心者

別々に処理する、っていうのはどういうことですか?

AI専門家

例えば、一枚の絵があるとします。通常の畳み込みは赤、青、緑の色の絵の具を混ぜて一気に新しい色を作るようなものです。Depthwise Separable Convolutionは、まず赤の絵の具だけを見て少し加工し、次に青の絵の具だけを加工し、緑も同様に加工します。その後で、加工済みの赤、青、緑の絵の具を混ぜて新しい色を作る、というイメージです。こうすることで、計算量が少なく済むんですよ。

Depthwise Separable Convolutionとは。

「人工知能」で使われる『奥行き方向分離畳み込み』という処理について説明します。この処理は、モバイルネットという小さな人工知能で、通常の畳み込み処理の代わりに使われています。

入力画像が縦×横×色の情報を持ったものだとします。通常の畳み込み処理では、複数のフィルターを使って画像の特徴を捉えます。それぞれのフィルターは、縦×横×色の情報を持っています。

一方、奥行き方向分離畳み込みでは、まず色の情報についてのみ畳み込み処理を行います。このとき使うフィルターは縦×横の情報のみを持ちます。その後、別のフィルターを使って、縦と横方向の畳み込み処理を行います。このフィルターは、1×1×色の情報を持っています。

このように処理を分けることで、計算量が約8分の1にまで減りました。

はじめに

はじめに

近頃は、深い学びが様々な分野で注目を集めており、特に絵を見て何が写っているかを当てる技術は目覚ましい発展を遂げています。この技術を支えるのが、畳み込みニューラルネットワークと呼ばれる仕組みです。この仕組みは、絵の中に隠された特徴を上手く掴み取る能力に長けています。しかし、この仕組みが複雑になるほど、計算に時間がかかり、多くの資源が必要になるという問題も抱えています。

そこで、計算の手間を減らしつつ、絵を正確に認識する能力を維持するための様々な工夫が研究されてきました。その工夫の一つに、「分離可能畳み込み」と呼ばれるものがあり、これは「モバイルネット」という、持ち運びのできる機器でも使えるように軽く作られた畳み込みニューラルネットワークで使われています。

通常の畳み込み処理では、絵の一部分に対して、縦と横の両方向を同時に見て特徴を捉えます。そのため、計算量が大きくなってしまいます。一方、分離可能畳み込みでは、縦方向と横方向を別々に見て特徴を捉えます。まず、縦方向にのみ注目して畳み込みを行い、次に、その結果に対して横方向に畳み込みを行います。このように処理を分けることで、計算量を大幅に減らすことが可能になります。

例えるなら、たくさんの数の書かれた表を計算する場面を想像してみてください。通常の畳み込みは、表全体を一度に計算するようなものです。一方、分離可能畳み込みは、まず各行ごとに計算を行い、次にその結果を使って列ごとに計算を行うようなものです。全体を一度に計算するよりも、行ごとに計算し、次に列ごとに計算する方が、計算の手間は少なくて済みます

このように、分離可能畳み込みは、計算の負担を軽くしながらも、絵の特徴を捉える能力を高く保つことができるため、持ち運びのできる機器での利用に適しています。この技術のおかげで、少ない資源でも高度な絵認識技術を活用できるようになり、私たちの生活はますます便利になっています。

項目 説明
畳み込みニューラルネットワーク 画像認識技術の中核。絵の特徴を捉えるのが得意。しかし、複雑になるほど計算に時間と資源がかかる。
分離可能畳み込み 計算量を減らしつつ画像認識能力を維持する工夫の一つ。モバイルネット等で使用。
通常の畳み込み処理 画像の一部分に対し、縦横両方向を同時に見て特徴を捉える。計算量が多い。
分離可能畳み込みの処理 縦方向と横方向を別々に見て特徴を捉える。まず縦方向、次に横方向に畳み込みを行う。計算量を大幅に削減。
分離可能畳み込みのメリット 計算の負担を軽くしながら、高い画像認識能力を保つ。少ない資源でも高度な画像認識技術を活用できる。

通常の畳み込み処理

通常の畳み込み処理

まず、画像認識などでよく使われる、通常の畳み込み処理について詳しく見ていきましょう。

畳み込み処理は、入力画像の特徴を捉えるための重要な技術です。この処理では、入力画像とフィルターと呼ばれる小さな画像を使って計算を行います。入力画像は、縦と横の大きさがそれぞれN画素で、色の情報などを表すチャンネル数がWだとします。例えば、カラー画像の場合は赤、緑、青の3つのチャンネルを持つので、Wは3になります。

フィルターは、入力画像から特定の特徴を抽出するための道具のようなものです。フィルターの大きさも縦と横がそれぞれK画素で、チャンネル数は入力画像と同じWになります。もし、M種類のフィルターを使うとすると、それぞれ異なる特徴を捉えることができます。例えば、あるフィルターは画像の輪郭を捉え、別のフィルターは色の変化を捉えるといった具合です。

畳み込み処理では、フィルターを入力画像の上で少しずつずらしながら、画像の各部分とフィルターの対応する部分をかけ合わせて、その合計値を求めます。この計算を画像全体で行うことで、特徴マップと呼ばれる新しい画像が作られます。特徴マップは、フィルターが捉えた特徴の分布を表しています。例えば、輪郭を捉えるフィルターを使った場合、特徴マップの値が大きい部分は画像の輪郭に該当します。

フィルターの大きさ(K)やフィルターの数(M)が多いほど、より多くの特徴を捉えることができますが、計算量も増えます。そのため、画像認識の処理速度と精度のバランスを考慮して、適切なフィルターの大きさと数を選ぶ必要があります。多くの場合、複数の畳み込み処理を組み合わせて、複雑な特徴を段階的に捉えていきます。

項目 説明
畳み込み処理 入力画像の特徴を捉えるための重要な技術。入力画像とフィルターを使って計算を行う。
入力画像 縦と横の大きさがそれぞれN画素、チャンネル数がW。カラー画像の場合、Wは3(赤、緑、青)。
フィルター 入力画像から特定の特徴を抽出するための道具。大きさ:縦横K画素、チャンネル数:W(入力画像と同じ)、M種類で異なる特徴を捉える。
畳み込み演算 フィルターを入力画像上でずらしながら、画像とフィルターの対応部分をかけ合わせて合計値を求める。
特徴マップ 畳み込み演算の結果。フィルターが捉えた特徴の分布を表す。
フィルターの大きさ(K)と数(M) 大きいほど多くの特徴を捉えられるが、計算量も増えるため、精度と速度のバランスを考慮して選択する。

分離可能畳み込みの仕組み

分離可能畳み込みの仕組み

分離可能畳み込みは、通常の畳み込みに比べて計算の手間を減らす効果的な方法です。

通常の畳み込みでは、縦・横・奥行きの三方向を一度に計算しますが、分離可能畳み込みではこれを二段階に分けます。

第一段階では、入力画像のそれぞれの色の層(チャンネル)に対して、縦方向と横方向にそれぞれ小さなフィルターを適用します。例えば、縦方向に3画素、横方向に3画素のフィルターを使うと、そのフィルターは元の画像の3×3の範囲の情報を読み取ることになります。この処理は、それぞれの色の層の中にある、縦縞や横縞のような、方向性のある模様を捉えるのに役立ちます。それぞれの色の層ごとに、縦方向と横方向のフィルターを適用することで、その層特有の模様を抽出します。

第二段階では、第一段階で得られた結果に対して、1×1の大きさのフィルターを適用します。一見すると、1×1のフィルターは何もしないように思えるかもしれません。しかし、このフィルターは異なる色の層の間で情報を混ぜ合わせる役割を果たします。例えば、赤い色の層で検出された縦縞模様と、青い色の層で検出された横縞模様を組み合わせることで、より複雑な模様を捉えることができます。

このように、分離可能畳み込みは、処理を二段階に分けることで、計算量を大幅に削減します。もし一度に三方向の畳み込みを行うと、計算量は色の層の数×縦のフィルターの大きさ×横のフィルターの大きさになります。しかし、分離可能畳み込みでは、第一段階の計算量は色の層の数×(縦のフィルターの大きさ+横のフィルターの大きさ)となり、第二段階の計算量は色の層の数×1×1となります。フィルターの大きさが大きくなるほど、この差は顕著になり、計算時間を大幅に短縮できます。これは、特に画像認識などの、大量の画像データを扱う処理において大きな利点となります。

ステップ 処理内容 効果 計算量
第一段階 各チャンネルに縦方向と横方向の小さなフィルターを適用 各チャンネル内の縦縞や横縞のような方向性のある模様を捉える 色の層の数×(縦のフィルターの大きさ+横のフィルターの大きさ)
第二段階 第一段階の結果に1×1のフィルターを適用 異なる色の層の間で情報を混ぜ合わせる (例: 赤の縦縞と青の横縞を組み合わせて複雑な模様を捉える) 色の層の数×1×1
通常の畳み込み 縦・横・奥行きの三方向を一度に計算 色の層の数×縦のフィルターの大きさ×横のフィルターの大きさ

計算量の比較

計算量の比較

画像認識などでよく使われる畳み込み処理には、様々な種類があります。ここでは、通常の畳み込み処理と、計算を軽くする工夫が凝らされた分離可能畳み込みの計算量を比べてみましょう。

まず、通常の畳み込み処理について考えてみます。縦と横の大きさがN×Nで、色の情報を持つW個の層からなる入力画像を考えます。この画像に、M個のフィルターを適用します。それぞれのフィルターは縦K×横Kの大きさで、W個の層に対応しています。つまり、フィルター一つはK×K×Wの大きさです。この処理に必要な計算量は、N×N×M×K×K×Wに比例します。

次に、分離可能畳み込みの計算量を見てみましょう。分離可能畳み込みは、二つの段階に分けて計算を行います。最初の段階では、N×N×Wの入力画像に対して、W個K×Kのフィルターを適用します。つまり、それぞれの層に対して別々のフィルターを適用します。この段階での計算量はN×N×W×K×Kに比例します。次の段階では、最初の段階で得られたN×N×Wの特徴マップに対して、M個1×1×Wのフィルターを適用します。これは、それぞれの位置で、W個の層の情報をまとめて、M個の新しい層を作り出す処理です。この段階での計算量はN×N×M×Wに比例します。したがって、分離可能畳み込み全体の計算量は、N×N×W×K×K + N×N×M×Wに比例します。

フィルターの大きさが3×3(つまりK=3)の場合を考えてみましょう。通常の畳み込み処理の計算量は9N×N×M×Wとなり、分離可能畳み込みの計算量は9N×N×W+N×N×M×W、つまりN×N×W×(9+M)となります。もしと近い値で、どちらもよりもずっと大きい場合、分離可能畳み込みの計算量は通常の畳み込み処理の計算量の約1/8になります。このことから、特にモデルが大きく、扱うデータ量が多いほど、分離可能畳み込みを使うことで計算量を大幅に減らせることが分かります。

畳み込みの種類 計算量 K=3 の場合の計算量
通常の畳み込み N×N×M×K×K×W 9N×N×M×W
分離可能畳み込み N×N×W×K×K + N×N×M×W N×N×W×(9+M)

N: 入力画像の縦横の大きさ

W: 入力画像の層の数

M: フィルターの数

K: フィルターの縦横の大きさ

モバイルネットへの応用

モバイルネットへの応用

持ち運びできる電話などの小さな機械で使うことを考えて作られた、軽い仕組みの畳み込みニューラルネットワークに、モバイルネットというものがあります。このモバイルネットは、小さな機械でもうまく動くように、少ない計算で済むようにできています。そして、少ない計算で済むにもかかわらず、高い性能を持っているため、色々なところで使われています。

モバイルネットがこのような特徴を持つ大きな理由の一つに、分離可能畳み込みという工夫があります。通常の畳み込み計算は、縦、横、奥行き全ての次元を一度に計算するため、計算量が多くなってしまいます。これを、分離可能畳み込みでは、奥行き方向の計算と、縦横方向の計算を分けて行うことで、計算量を大幅に減らすことができます。

具体的には、まずそれぞれの奥行き方向ごとに独立した畳み込み計算を行います。そして、その結果を組み合わせ、縦横方向の畳み込み計算を行います。このようにすることで、計算量を減らしながらも、必要な情報を抽出することができます。例えるなら、たくさんの種類の部品を一度に組み立てるのではなく、種類ごとに分けて組み立て、最後にそれらをまとめて完成品を作るようなものです。

この分離可能畳み込みの工夫が、モバイルネットの軽量化に大きく貢献しているのです。モバイルネットのように限られた計算資源しかない環境では、いかに効率的に計算を行うかが重要になります。分離可能畳み込みは、そのための有効な手段の一つであり、モバイルネットの成功を支える重要な技術と言えるでしょう。そのおかげで、私たちは高性能なアプリを、小さな携帯電話でも快適に利用できるようになっています。

モバイルネットの特徴 理由 効果
軽量で、小さな機械でも動作可能 分離可能畳み込みによる計算量の削減 様々な機器で利用可能
少ない計算量 分離可能畳み込み 高性能なアプリを携帯電話で快適に利用可能
高性能 少ない計算量でも必要な情報を抽出できる分離可能畳み込み 様々な機器で利用可能
分離可能畳み込み 奥行き方向と縦横方向の計算を分けて行う 計算量を大幅に削減

まとめ

まとめ

近年の深層学習モデルは高精度化が進んでいる一方で、計算量の増大という課題も抱えています。特に、限られた計算資源しかない環境では、大規模なモデルの学習や利用が困難となる場合もあります。このような問題に対し、計算量を削減しつつ精度を維持するための様々な手法が研究されており、その中でも有効な手段の一つが分離可能畳み込みです。

分離可能畳み込みは、従来の畳み込み演算を二つの段階に分割することで計算量を削減します。まず、入力の特徴マップの各々の通り道に対して、それぞれ独立した畳み込み処理を行います。これは、色に関する情報を個別に処理することに例えられます。次に、空間方向、つまり縦と横方向に対して畳み込み処理を行います。これは、模様のような空間的な特徴を捉える処理に相当します。このように、処理を二段階に分けることで、従来の手法に比べて大幅に計算量を削減できます。

分離可能畳み込みは、既に様々な場面で活用されています。例えば、モバイル機器向けの軽量な深層学習モデルであるモバイルネットでは、この技術が採用されており、限られた計算資源でも高い性能を実現しています。その他にも、画像認識や自然言語処理など、様々な分野の深層学習モデルにおいて、計算量の削減と精度の維持に貢献しています。

深層学習モデルは今後もますます大規模化していくと予想され、計算量の削減はますます重要な課題となるでしょう。分離可能畳み込みのような効率的な畳み込み演算は、深層学習の更なる発展を支える基盤技術として、今後ますます重要な役割を担っていくと考えられます。特に、スマートフォンや組み込み機器といった計算資源が限られた環境において、高度な深層学習モデルの利用を可能にする上で、その重要性はますます高まっていくでしょう。

まとめ