多次元尺度構成法(MDS)とは?仕組み・見方・PCAとの違いを解説

AIの初心者
「多次元尺度構成法」は、どのようなデータ分析に使う方法ですか?

AI専門家
対象同士の「似ている・似ていない」を距離で表し、似たものは近く、異なるものは遠くなるように平面へ並べる方法だよ。複雑なデータの関係を、地図のように見られるんだ。

AIの初心者
なぜ、わざわざ平面に並べ直すのでしょうか?

AI専門家
特徴が何十個もあるデータは、そのままでは全体像をつかみにくいからだよ。2次元や3次元にすると、似た商品の集まりや、ほかと離れた対象を直感的に探せるようになるんだ。
多次元尺度構成法は、データ同士の距離を地図にする方法です。
多次元尺度構成法(Multidimensional Scaling:MDS)は、対象間の距離や非類似度をできるだけ保ちながら、対象を2次元または3次元に配置する次元削減手法です。関係の近い対象が近くに集まるため、複雑なデータの構造を視覚的に確認できます。
多次元尺度構成法(MDS)とは

多次元尺度構成法は、対象同士の近さ・遠さを保ちながら、見やすい座標へ並べ直す手法です。例えば、果物を甘さ、酸味、硬さ、香りなどで評価すると、各果物は多数の特徴を持つ高次元データになります。人は4次元以上の空間を直接見られませんが、MDSで2次元にすれば、味が似た果物は近く、異なる果物は遠くに配置されます。
MDSが必要とする中心的な情報は、必ずしも元の特徴量そのものではありません。対象の全組み合わせについて「どれだけ異なるか」を並べた距離行列や非類似度行列があれば分析できます。そのため、数値の特徴量だけでなく、アンケートで得た似ていなさの評価なども扱える点が特徴です。
完成した図は、正確な地図の縮小版というより、関係を見渡すための案内図です。近い点の集まり、離れた点、全体の並び方を観察し、分析の仮説を立てる用途に向いています。
距離・類似度・非類似度の関係

「距離」は対象間の隔たりを表し、値が大きいほど異なると考えます。「類似度」は似ている度合いで、一般には値が大きいほど似ています。「非類似度」は似ていなさなので、距離と同じ向きに解釈できます。MDSでは、類似度を非類似度へ変換して使うこともあります。
| 情報 | 値の読み方 | 例 |
|---|---|---|
| 距離 | 大きいほど離れている | 都市間距離、特徴量のユークリッド距離 |
| 類似度 | 大きいほど似ている | 好みの一致度、コサイン類似度 |
| 非類似度 | 大きいほど異なる | 商品の印象が違う度合い |
注意したいのは、距離の定義によって完成する配置も変わることです。身長をセンチメートル、価格を円のまま計算すると、値の大きな価格が距離を支配する場合があります。特徴量から距離を作るときは、目的に合う距離尺度を選び、必要に応じて標準化します。
MDSはどのように配置を決めるのか

基本的な流れは、①対象間の距離または非類似度を用意する、②低次元空間に各対象の仮の座標を置く、③元の距離と図上の距離のずれが小さくなるよう座標を調整する、④十分に改善したところで配置を確定する、というものです。
ずれの大きさを評価する代表的な指標が「ストレス」です。考え方を簡略化すると、元の非類似度 \(\delta_{ij}\) と、配置後の点間距離 \(d_{ij}\) の差を全ペアで評価します。
\(\mathrm{Stress}=\sqrt{\frac{\sum_{i<j}(d_{ij}-\delta_{ij})^2}{\sum_{i<j}\delta_{ij}^2}}\)ストレスが小さいほど、低次元の図が元の距離関係をよく再現していると解釈できます。ただし、適切といえる値はデータ数や手法によって変わるため、単一の基準だけで良否を決めず、次元数を変えた結果や配置の安定性も確認します。距離の大小そのものを合わせる計量MDSと、距離の順位関係を重視する非計量MDSがあり、データの尺度に応じて使い分けます。
MDSプロットの読み方
MDSの図では、まず点同士の相対的な距離を見ます。近い商品は回答者から似ていると評価された可能性があり、まとまった点群は共通した特徴を持つ候補です。ほかから大きく離れた点は、独自性のある対象や外れ値かもしれません。
一方、横軸・縦軸に最初から「甘さ」「価格」のような意味が付いているとは限りません。配置全体を回転、反転、平行移動しても点間距離は変わらないため、軸の正負や向きだけを根拠に解釈するのは危険です。別の属性と照合して、配置方向にどのような意味がありそうかを後から検討します。
また、2次元化すると情報の一部は失われます。図上で近いから同じ集団だと即断せず、ストレス、元の距離、クラスタリングなどの別分析と合わせて確かめることが大切です。
主成分分析(PCA)との違い

MDSと主成分分析(PCA)は、どちらも高次元データを低次元で可視化できますが、重視する情報が異なります。MDSは対象間の距離関係を再現し、PCAは元の特徴量の分散を大きく残す新しい軸を求めます。
| 比較項目 | MDS | PCA |
|---|---|---|
| 主な入力 | 距離・非類似度行列 | 対象×特徴量の数値行列 |
| 重視するもの | 対象間の近さ・遠さ | データの分散 |
| 軸の意味 | 通常は後から検討する | 特徴量の重みから解釈できる |
| 向く場面 | 距離だけがある、関係を地図化したい | 特徴量の要約や寄与を見たい |
数値の特徴量があり、どの変数が新しい軸に効いているか知りたいならPCAが有力です。アンケートによる非類似度や特殊な距離を使い、対象同士の位置関係を見たいならMDSが適しています。どちらが常に優れているのではなく、何を保存して可視化したいかで選びます。
多次元尺度構成法の活用例

市場調査・マーケティングでは、商品やブランドに対する印象の違いを配置し、競合関係や市場の空白を探します。購買行動が似た顧客の把握や、新商品の位置付けを考える材料にもなります。
心理学では、感情、色、音などを人がどの程度似ていると感じるか調べ、その心理的な構造を可視化します。物理的な測定値では表しにくい主観的な関係を扱えるのが利点です。
地理・ネットワーク分析では、都市間の物理距離だけでなく、移動時間、交通のつながり、経済的な結び付きなどを距離として表現できます。通常の地図とは違う「関係の地図」から、実態に近いまとまりを検討できます。
分析前に知っておきたい注意点
- 距離尺度を目的に合わせる:ユークリッド距離、マンハッタン距離、相関に基づく距離などで結果は変わります。
- 単位とスケールを確認する:特徴量の単位が異なる場合は、標準化の要否を検討します。
- 2次元に固定しすぎない:ストレスが大きければ3次元も試し、見やすさと再現性を比較します。
- 初期値と局所解に注意する:反復最適化を使う手法では、複数の初期値で実行して安定性を確かめます。
- 図だけで結論を出さない:見えた集団や外れ値は、元データや別の統計手法で検証します。
まとめ
多次元尺度構成法は、対象間の距離や非類似度をなるべく保ち、複雑な関係を2次元や3次元の地図として表す手法です。似た対象の集まりや独自性のある対象を直感的に探せる一方、距離尺度の選択、ストレス、軸の解釈には注意が必要です。
PCAが分散を残す軸を求めるのに対し、MDSは距離関係の再現を重視します。入力データと分析目的を確認し、図を仮説発見の入口として使うことで、マーケティング、心理学、地理など幅広い分野の理解に役立てられます。
更新履歴
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2025年2月1日 | 初回公開 |
| 2026年7月11日 | 距離行列から配置を求める流れと、図の読み方・PCAとの使い分けを追記 |
