
デルファイ法:専門家の知恵を集結
デルファイ法は、将来の出来事や複雑な問題の解決のために用いられる、集団による意思決定の手法です。名前の由来は、古代ギリシャのデルフォイにある神託ですが、デルファイ法は、未来を占うのではなく、多くの専門家の知恵と経験を最大限に活用することで、より確度の高い予測や判断を行うことを目指します。
この手法の中心となるのは、複数回にわたるアンケート調査です。複数の専門家に質問を送り、回答を集めます。そして、集まった回答は匿名化され、参加者全員に共有されます。誰がどのような意見を持っているかはわからないようにすることで、上下関係や立場による影響を受けずに、自由に意見を述べることが可能になります。参加者は他の専門家の考えに触れることで、自分自身の意見を改めて考え直したり、新たな視点を得たりすることができます。
デルファイ法の重要な特徴は、フィードバックの繰り返しです。一回目のアンケートが終わると、回答を集計した結果や他の専門家の意見が、参加者全員にフィードバックされます。これにより、参加者は自分の意見が全体の傾向と比べてどうなのか、他の専門家はどのような理由で異なる意見を持っているのかなどを知ることができます。このフィードバックをもとに、参加者は自分の意見を修正したり、新たな考えを深めたりすることができます。そして、再びアンケートに回答します。
このように、アンケートとフィードバックを複数回繰り返すことで、参加者の意見は徐々に収束していきます。個々の専門家の偏った考えや主観的な判断の影響が薄まり、より客観的で信頼性の高い結論へと近づくことが期待されます。最終的には、集団としての知恵を結集した、より精度の高い予測や判断を導き出すことができます。デルファイ法は、様々な分野で活用されており、将来の技術予測や社会問題の解決などに役立てられています。