
ワンホットベクトル入門
複数の数値をまとめて扱う数学的な道具のことを、ベクトルと言います。ベクトルは、まるで矢印のように、大きさだけでなく向きも持った量として捉えることができます。しかし、必ずしも向きを持つとは限らず、複数の数値をまとめて一つのものとして扱うための便利な表現方法として使われる場合も多くあります。
例えば、あるお店で売られているリンゴ、バナナ、ミカンの個数を考えてみましょう。リンゴが10個、バナナが5個、ミカンが8個だとします。このとき、[10, 5, 8] というように、それぞれの果物の個数を角括弧の中に並べて書くことで、一つのベクトルとして表現できます。このベクトルは、お店の果物の在庫状況を簡潔に表しています。それぞれの数値はベクトルの「成分」と呼ばれ、この場合は3つの成分を持つベクトルと言えます。
ベクトルを使うことで、様々なデータを分かりやすく表現し、効率的に処理できます。例えば、ある文章に含まれる単語の数を数えてベクトルとして表すことができます。「りんご」が2回、「バナナ」が1回、「みかん」が0回出てきたとすると、[2, 1, 0] というベクトルで表現できます。このように単語の出現回数をベクトルで表すことで、文章の特徴を捉えることができます。二つの文章のベクトルを比較することで、文章同士の類似度を測ることも可能です。
ベクトルは、データの種類や目的に応じて様々な形で表現され、データの分析や機械学習など、幅広い分野で活用されています。例えば、画像認識では、画像を小さな色のついた正方形の集まりとして捉え、それぞれの正方形の色を数値で表すことで、画像全体を一つのベクトルとして表現できます。このようにして表現された画像ベクトルは、画像の分類や検索などに利用されます。また、自然言語処理においても、単語や文章をベクトルで表現することで、文章の意味理解や機械翻訳などに役立てられています。