暗黙知

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AI活用

知識獲得の難しさ:AIの壁

人工知能という新しい考え方が生まれた時、多くの人が大きな希望を抱きました。まるで人間のように考え、難しい問題を解いてくれる機械は、皆の夢でした。その夢を実現するために、人工知能の研究が盛んになった時期、とある方法に注目が集まりました。それは「専門家システム」と呼ばれるもので、特定の分野で活躍する専門家の知識を機械に教え込もうという試みでした。 専門家システムを作るには、まず、専門家がどのような知識を使って考え、判断しているのかを詳しく調べなければなりません。そして、その知識を明確な規則に変換し、機械が理解できる形に書き直す必要があります。例えば、医者が患者の症状から病気を診断する過程を、いくつもの「もし~ならば~」という規則で表現するのです。こうして、たくさんの規則を機械に覚えさせることで、まるで専門家のように考え、答えを出してくれるシステムを作ろうとしました。 しかし、この試みは大きな壁にぶつかりました。それは「知識獲得の難しさ」です。人間にとっては当たり前の知識や経験でも、機械に理解させるには、明確な規則や数値データに変換する必要があります。しかし、専門家の知識は必ずしも明確な言葉で表現できるわけではなく、経験に基づく直感や暗黙知といった、言葉で説明しにくいものも多く含まれています。このような知識を機械に教え込むことは、想像以上に難しい作業でした。たとえ専門家が丁寧に説明してくれたとしても、それを規則に書き換える作業は大変な労力を必要としました。また、専門家の知識は常に変化し、新しい情報が追加されていくため、システムを常に最新の状態に保つことも大きな課題でした。こうして、専門家の知恵を機械に移植するという試みは、当初の期待ほどには進展せず、人工知能研究は新たな局面を迎えることになります。
その他

知識創造の螺旋:SECIモデル

{現代社会を生き抜くには、知識というかけがえのない資源をどう扱うかが鍵となります。会社組織に限らず、あらゆる団体にとって、常に新しい知識を生み出し、うまく活用していくことは、他との差を生み出し、勝ち抜くために欠かせません。そのような中で、組織における知識の創造過程を理解し、促進するための枠組みとして、SECIモデルが登場します。このモデルは、知識をどのように新しいものへと作り変えていくのか、その仕組みを明らかにするものです。 知識には、言葉で表現できない、経験や勘に頼る暗黙知と、言葉や図表で表現できる形式知の二つの姿があります。例えば、自転車の乗り方を説明するマニュアルは形式知ですが、実際にバランスを取って乗る感覚は暗黙知です。SECIモデルは、この二種類の知識がどのように影響し合い、組織の中で新しい知識が生まれるのかを説明します。具体的には、個人が持つ暗黙知が、他の個人と共有され、組織全体に広がる過程を共同化、暗黙知を形式知に変換する過程を表出化、形式知を組み合わせ新たな形式知を生み出す過程を連結化、形式知を個人が吸収し新たな暗黙知を獲得する過程を内面化と呼びます。 SECIモデルを理解することで、個人が持つ暗黙知を組織全体の財産として活用し、新たな知識の創造を促すことができます。例えば、熟練の職人だけが持つ技術をマニュアル化し、若手に共有することで、組織全体の技術力の向上に繋がります。このように、SECIモデルは、組織の成長にとって非常に重要な役割を果たすのです。