その他 フォルマント:音色のひみつ
音は空気の振動によって生まれますが、一つの音には様々な高さの振動が含まれています。例えば、ある高さの音を基準とした時、その整数倍の高さの振動も同時に発生しており、これらの振動の組み合わせが、音色の違いとなって私たちの耳に届きます。
楽器で例えるとわかりやすいでしょう。同じ高さの音を、ピアノ、バイオリン、フルートでそれぞれ演奏したとします。音の高さは同じでも、それぞれの楽器の音は明らかに違います。これは、楽器によってそれぞれの振動の強弱のバランスが異なるからです。この音色の違いを生み出す要素の一つが、フォルマントと呼ばれるものです。
フォルマントとは、音の成分の中で特定の周波数帯が強調された部分のことです。山の峰のように、特定の周波数帯が周囲よりも強く出ている部分を指します。この、強調された周波数やその強弱のバランスによって、私たちは「あ」や「い」といった母音の違いや、楽器の音色の違いを聞き分けます。
人の声の場合、声帯の振動が喉や口、鼻といった声道を通過する際に、特定の周波数の音が共鳴して強調されます。この共鳴によってフォルマントが形成されます。声道は、舌や唇、顎の動きによって形を変えることができます。その形を変えることで共鳴する周波数も変化し、結果として異なる母音を出すことができます。
楽器も同様に、それぞれの楽器の形状によって共鳴する周波数が異なり、特有のフォルマントが作られます。例えば、バイオリンのふくよかな音色は、その胴体の形状が特定の周波数を共鳴させることで生まれます。
このように、フォルマントは音色を決定づける重要な要素であり、私たちが音を認識する上で非常に重要な役割を担っています。
